2022.04.13
人事評価制度を運用するには、人事評価シートの入力や集計、定期的な面談やフィードバックなど、マネジメント層を中心として大きな負担が発生します。
しかし、パーソル総合研究所の「人事評価と目標管理に関する定量調査」によると、人事評価制度に不満を感じている人の割合は38.3%にのぼり、多大な労力を費やしているにもかかわらず、人事評価制度が機能していない企業が多く見られます。
人事評価制度の課題を解決するなら、人事評価システムの導入を検討しましょう。とくに従業員数が多い企業の場合、人事評価の効率化は急務です。
この記事では、人事評価システムのメリットや目的、業務改善につながった事例を紹介します。
社会保険労務士:蓑田真吾(当記事執筆・監修)
目次
人事評価システムを導入するメリットは5つあります。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
人事評価システムを導入すれば、目標設定やフィードバックなどの管理業務を効率化し、マネジメント層の業務負担を軽減できます。パーソル総合研究所によると、目標管理制度における課題として、47.4%の企業が「評価・目標設定プロセスでの上司層の負荷が高い」と回答しています。
システム化によって非効率的な事務作業を減らすことで、業務効率化を実現可能です。
同様にパーソル総合研究所の調べでは、「従業員の仕事へのモチベーションを引き出せていない(55.8%)」「評価に不満を覚える従業員が多い(43.3%)」という課題が挙げられています。人事評価システムを活用すれば、人事評価をより公平化し、納得感を高めることが可能です。
たとえば、人事評価システムには役職者の評価をグラフ化し、異常値を検出する仕組みがあるため、評価のばらつきを防げます。
人事評価制度は一朝一夕に成り立つものではなく、過去から実績を積み上げていくことによって自社のニーズに合致した制度が出来上がります。紙やエクセルでの管理の場合、スピーディーに過去のデータを参照することが難しい反面、システム化することでその悩みを解決することができます。特に評価が難しい職種(例えばマーケティング職)の場合、過去のデータを考慮するケースも少なくありません。データ化することで、抽出スピードは紙やエクセルの比較になりません。もちろんエクセルでも関数を用いて、データを抜き出すことは可能ですが、システムと同等のレベルまで持って行くには相当の下準備と時間を要します。
実際に人事評価制度を運用していくにあたっては評価後のデータを反映する作業が必要です。特に20人程度以下の中小企業であれば反映作業はそこまで多くの時間を要しませんが、20人を超えてくると反映作業には多くの時間と労力を要します。また、誤って適用してしまった場合、その修正作業にも膨大な時間を要することから、当初から可能な限りヒューマンエラーを排除できる「システム化」を念頭に検討を進めるケースが一般的になっています。特に評価項目が多岐にわたる場合、反映作業には一定以上の時間が必要となります。
システム化によって時間や場所を問わずアクセスできるようになるため、透明性のある制度の運用が可能となります。
また、紙管理と比べると、評価担当者が正確な評価項目を把握しやすくなる点もメリットです。評価項目の失念による不適切な評価なども、ある程度回避できるでしょう。
そもそも人事評価システムを導入する目的は、従来の紙やエクセルを使った人事評価から脱却するためです。紙やエクセルでの人事管理には、次のような課題があります。
しかし、人事評価システムを導入すれば、人事評価の入力作業や集計作業がすべてWeb上で完結します。人事評価がデータベース化されるため、役職者からのフォローやフィードバックもWeb上でおこなうことが可能です。人事評価をシステム化し、紙やエクセルでの管理を脱却しましょう。
まずは自社に必要な機能を見極めることが重要です。候補のシステムを比較・検討する際は、発生するコストや費用対効果などを考慮しつつ、身の丈に合ったシステムを選びましょう。
必要な機能はもちろん、不要な機能などもリストアップし、システム選定時に優先順位をつけやすくしておくことをおすすめします。
専門的な業種の場合、評価項目も特徴的であることから、どの程度カスタマイズが可能か、また、導入後の修正対応はどの程度まで可能かを優先的に考慮しましょう。
また逆に、標準的な評価方法に自社の制度を変更できないか検討してみることも有用です。
会社の現状の課題を洗い出し、現状分析を行います。この時点で何も問題がなければ必ずしも人事評価システムの導入に固執する必要はありませんが、多くの場合、何も問題がないとうことは多くありません。
導入した場合、どのような効果を享受し得るのかをシミュレーションしましょう。ここで、次工程のどの程度の費用までならシミュレーション結果を踏まえ、会社として費用を支出できるのかの判断材料となります。
経営的な側面がありますので会社ごとにどの程度費用をかけられるのかは異なってきますが、財務部門との調整後に判断すべき部分です。
最も失敗事例に近づくパターンとして、導入時に十分なケアがなされないことが挙げられます。
導入説明会という形に固執せずとも、操作レクチャーなどは必須です。定着化のために丁寧に実施しましょう。
システムを選択する際も、このケアが十分か、ケアが少なくて済むかなどを評価基準にしておくことをお勧めします。
システムを用いての人事評価制度に精通していない評価者は少なくありません。継続的に研修を実施し、本質的に意味のある制度を構築しましょう。
産業機器や工作機械などの販売を手がけるA社は、エクセルベースの人事評価制度を導入していました。A社の従業員数は300名を超えており、人事評価シートの配布・回収・保管だけでも多大な事務コストが発生していました。A社は人事評価システムの導入を検討したものの、利用者に大きな負担がかかる点を懸念していました。
そこで、A社は既存のエクセルファイルをそのまま取り込み、システム化できる人事評価システムを導入しました。結果として、従来の評価体制のまま人事評価の事務コストを削減でき、経営課題の解決につながりました。
システムを導入したことで、人事評価シートの管理効率が圧倒的に上がり、少ない時間で業務を回せるようになりました。人を介しての管理とは比較にならないほど正確かつ迅速であり、早期に導入を決断することで、導入後に新たに生み出される時間数も膨大となります。
費用を投入してシステムを導入し、人事評価制度を進めるということは、社員の評価について会社として、真意に向き合っている意思表示と言えます。主観的な評価ではなく、客観的な尺度で評価される環境が整っているとういことは、社員の会社帰属意識を高める効果があります。
人事評価システムを導入するときは、「利用者にとって使いやすいシステムか」「紙やエクセルからスムーズに移行できるか」の2点に注意しましょう。
まずは人事評価システムの画面や操作性をチェックし、利用者にとって使いやすいシステムかどうか確認しましょう。可能であれば、無料のデモや人事評価シートのサンプルなどを活用し、システムを導入する前に使い勝手を確認することが大切です。
すでに紙やエクセルでの人事評価を導入している場合は、紙やエクセルからスムーズに移行可能な製品を選びましょう。人事評価システムによっては、既存の評価体制を大きく変更しなければならない製品もあります。
その場合、新しい業務フローが定着するまで数年単位の時間がかかり、人事評価の効率化が遅れる可能性があります。
評価者のITリテラシーレベルを超える複雑なシステムを導入してしまった結果、かえって操作に膨大な時間を要してしまう可能性があります。
特に評価者の年齢層が高い会社の場合、必ずしもITリテラシーが高くない可能性があります。システムの考え方や操作方法などを把握し、自社に適用可能か検討しましょう。必ずしも「高機能・多機能・高額=良いシステム」ではないということに注意が必要です。
人事評価制度の運用には多大な手間や工数がかかります。人事評価システムを導入し、人事評価シートの入力・回収といったムダな事務作業をなくすことで、業務効率化を実現できます。
すでに紙やエクセルでの人事評価を導入している場合は、紙やエクセルからスムーズに移行可能な人事評価システムを選びましょう。
人事評価システムの導入なら、紙やエクセルの人事評価シートをそのままシステム化できる「人事評価シートDX」がおすすめです。従来の業務フローを変更せず、スムーズに人事評価をシステム化できます。
人事評価の入力もWeb上でかんたんにできるため、はじめて人事評価システムを導入する企業にもおすすめです。
社会保険労務士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。法改正内容を踏まえながら、ヒアリング内容を基に、企業に合った様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業の人事労務業務をサポートしています。