2023.03.17
「人事評価シート」は、従業員の業績・能力・意欲などの評価項目を整理して管理するためのシートです。人事評価シートを適切に作成・運用することで、人事評価の透明性を担保できます。
また、従業員の能力や実績を正確に把握できるので、人的リソースを最大限に活かした人員配置に役立つほか、適正な人事評価が行われることで従業員のモチベーションが高まることも期待できるでしょう。
この記事では、企業の人事・総務担当者、管理職・マネージャーの方向けに、人事評価シートを運用する目的をはじめ、主な評価項目、評価担当者による記入例などについて解説します。
目次
まずは、「人事評価シート」の概要と目的について、以下の4つのポイントから解説します。
「人事評価シート」とは、従業員の評価を記入するためのシートです。「業績・成果評価」「能力評価」「情意・意欲評価」といった評価項目を記載し、各項目ごとに評価基準を定めて、その達成度に応じて評価値を記載します。
MBO(目標管理制度)を導入している場合は、従業員が設定した業務目標の達成度合いが、人事評価の評価基準のひとつになります。また、人事評価シートは評価基準を明確化し、従業員に伝える役割も担っていることがポイントです。評価基準を知ることで、従業員が評価結果に納得しやすくなります。
人事評価シートの目的について、さらに詳しく見ていきましょう。
人事評価シートは、従業員に対して評価基準を明確に提示します。これは、企業の経営ビジョンや事業の方向性を示すことにもつながります。
企業が業績を伸ばすためには、従業員と企業が一体になり、同じ方向へ進むことが必要です。両者の向かう方向が異なれば、従業員がいくら努力しても企業が期待する成果は出ず、適切な人事評価もできません。
明確な評価基準を示された従業員は、「企業が何を目指しているか」「所属部門や自分に何が求められているか」を認識できます。組織全体で意識を統一できるため、企業文化や風土の形成にも役立つでしょう。
従業員の昇進や昇給を客観的に判断できるようにすることも、人事評価シートの目的のひとつです。
人事評価は従業員の待遇や給与額に影響するため、従業員は評価結果に敏感です。納得できない評価をつけられた従業員のモチベーションは、自ずと低下してしまいます。不適切な人事評価が常態化していると、組織全体のパフォーマンス・業績にも悪影響を及ぼしかねません。
人事評価シートの導入により、あらかじめ設定された評価項目や基準に従って、評価者が従業員を評価できるようになります。評価根拠が明確になり、従業員も評価結果に納得しやすくなるでしょう。
前述した通り、人事評価シートで評価基準を明確化できれば、公平で透明性が高い人事評価制度を実現できます。つまり、「あらかじめ設定した目標に沿って成果を出せば、昇給・昇進につながる」ことを従業員に示すことができるということです。
また、評価担当者の属人的な経験や主観ではなく、客観的な基準で評価が行われるため、従業員同士の不公平感が出にくく、誰もが納得できる評価結果がつけられます。適正な人事評価が行われていることを理解した従業員のモチベーションは、自ずと高まるでしょう。
人事評価シートの主な評価項目として、以下の3つが挙げられます。
業績や成果について、事前に設定した目標の「達成度」を評価する項目です。例えば、「新規契約を10件獲得する」「開発工数を〇%削減する」などの目標を、どれくらい満たせたかを評価します。業績や成果による評価には、大きく分けて以下の3種類があります。
業績目標達成度あらかじめ設定した業務目標の達成度を評価する課題目標達成度従業員のレベルに応じて設定された課題の達成度で評価する日常業務成果日常の業務でどれだけ組織に貢献しているかを評価する
評価の種類 | 概要 |
---|---|
業績目標達成度 | あらかじめ設定した業務目標の達成度を評価する |
課題目標達成度 | 従業員のレベルに応じて設定された課題の達成度で評価する |
日常業務成果 | 日常の業務でどれだけ組織に貢献しているかを評価する |
目標は期首に設定するのが一般的です。具体的な数値のような「定量的」な目標を設定することで、評価担当者が客観的に評価しやすくなります。また、成果に至るまでの取り組みやプロセスを評価するケースも増えています。
従業員のスキルや能力を評価するための項目です。職種や役職によっても異なりますが、例えば、以下の4種類のような項目で評価します。
評価の種類 | 概要 |
---|---|
企画力 | 業務を効率的に進めるための企画や計画ができているか評価する |
実行力 | 担当業務を遂行して成果を出すことができているか評価する |
改善力 | 業績や業務効率の改善につながる提案や工夫ができているか評価する |
調整力 | チーム内の同僚や上司、取引先などと、適切な連携・調整ができているか評価する |
また、評価対象となる能力は以下の3種類に分けることもできます。
評価の種類 | 概要 |
---|---|
保有能力 | 従業員が保有しているスキルや資格などから見た能力 |
発揮能力 | 実際に業務で発揮された能力 |
潜在能力 | 今後、発揮されると考えられる能力 |
保有能力と発揮能力は、業務遂行時に観察しやすいため、重視されることが多いです。一方、潜在能力は適切な判断が難しいため、評価対象としない企業も少なくありません。
情意や意欲、つまり勤務態度や仕事に取り組む姿勢を評価します。情意に該当する要素として、主に以下の4つが挙げられます。
情意の種類 | 概要 |
---|---|
規律性 | 社内のルールやコンプライアンスを守れているか |
責任性 | 担当している職務を成し遂げたか |
積極性 | 熱意をもって業務に取り組めているか |
協調性 | 周囲と協力して業務を進められているか |
なお、情意や意欲の評価は、評価担当者から見て問題がなくても、同僚や後輩、取引先の間では全く異なる場合があります。そのため、上司などだけではなく、同僚や部下からの評価も加味した「360度評価」「多面評価」を取り入れるケースも増えています。
人事評価シートを活用することで、以下のようなメリットや効果が得られます。
人事評価シートを活用すると、従業員を評価するための「項目」や「基準」が明確になるため、評価者全体の認識を統一できます。評価者によって重視するポイントが異なったり、評価者の主観に大きく左右されたりする事態を防げるのです。
その結果、企業全体で在籍している従業員の能力や業績を、正確かつ迅速に把握できるようになります。組織改編や新規事業立ち上げなどの際には、的確な人員配置計画を立てたり、不足している人材の採用計画に役立てることができるでしょう。
人事評価の属人化やバラつきは、従業員が不公平さを感じる原因です。人事評価シートには、明確な評価基準が記載されているため、従業員も「どこが評価されるか」「何が求められるか」が事前に分かります。人事評価シートで統一された基準を設けることで、従業員に対して人事評価の公平性を担保できるため、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
人事評価シートで評価基準を明確化すると、「求められているスキルや能力が何か」を従業員が把握できます。基準と比較して今の自分に不足しているスキルや能力、長所を活かして伸ばせるスキルや能力が分かり、自主的な成長を促すことが可能です。
適切な人事評価で「成長が評価に反映される」ことを示せば、従業員はスキル向上や成長に対して積極的になります。結果的に、効果的な人材育成が行いやすくなるでしょう。
人事評価シートを活用する際は、以下のようなポイントや注意点があります。
人事評価シートには、具体的かつ実現可能な目標を設定するのがポイントです。
例えば、「売上を増やす」という目標では漠然としていて達成基準が曖昧なので、客観的な評価ができません。「売上を20%増やす」のように数値を盛り込めば、評価者が客観的に評価しやすくなります。目標を定量化できない場合でも、「ここまで実現できたら達成」という条件をできるだけ明確化すれば、評価者と従業員の認識のズレを防げるでしょう。
また、実現可能な目標を設定することも重要です。目標の難易度が高すぎても低すぎても、効果的な人事評価の運用ができません。そのため、目標を設定する段階で「目標が易しすぎないか」「到底、実現不可能な目標設定になっていないか」、上司と従業員双方で確認して、必要に応じて調整を加えるよう注意しましょう。
評価担当者は、可能な限り客観的な視点で従業員を評価することが大切です。人事評価の結果は、従業員一人一人の給与や昇給にダイレクトな影響を与えるため、不公平な評価が行われると従業員のモチベーションが低下します。また、企業全体の適切な人員配置にも影響を与えかねません。
そのため、従業員の成果やスキルを客観的に判断することはもちろん、フィードバック面談で合理的な評価理由を伝えられるようにすると、従業員が評価値に納得できるようになるでしょう。
従業員に対する評価やフィードバックを文章で記載するときは、できるだけ簡潔に記載することが大切です。内容を詰め込んだ長い文章では、要点が伝わらず、従業員が理解しづらくなります。
そのため、詳しい補足説明はフィードバック面談で伝えることにして、要点を箇条書きにして簡潔に記載するのがポイントです。シンプルな伝え方であれば、あとで従業員が振り返るときにも「評価の理由」や「改善すべき点」が分かりやすいでしょう。
評価をする際は、評価基準に沿って、具体的な数値で評価するのがポイントです。具体的な根拠を示すことで、従業員は評価結果に納得しやすくなり、エンゲージメントの向上につながります。
例えば、「売上目標の達成度」「商談化した件数」「納品案件数・金額」「削減した工数(割合)」など、従業員があらかじめ設定した定量的な目標をもとに評価します。定量化が難しい目標や実績を評価する場合は、「納品書・請求書の事務処理業務を効率化させた」「アップセル・クロスセルへつながる新規フローを構築した」など、従業員の成果を具体的な言葉で表現することが大切です。
従業員を評価する際は、課題点だけではなく改善策も記載することが重要です。ただし、前述したように評価やフィードバックは簡潔に記載する必要があるため、人事評価シートではシンプルにまとめて、フィードバック面談で詳細を伝えるのがおすすめです。
例えば、営業職の従業員の人事評価シートで、以下のように評価を記載したとします。
達成した評価と合わせて、課題点や「どうすれば良くなるか」の具体的な方向性を伝えましょう。成長につながる前向きな内容を記載することで、従業員が次期に改善すべきことが具体的にイメージできます。
評価者が被評価者を評価する際、評価者がどのように記載すれば良いか、以下の職種別に例文を紹介します。
営業職や販売職は、目標と達成度の双方を「数値」で表現できるため、客観的に評価しやすい職種です。ただし、業績だけでは個人の努力や取り組みを評価しきれません。情意についても評価できるように、従業員の様子を普段から観察しておきましょう。
<記入例文>
企画職やマーケティング職は、リサーチ力や提案力など、実績を数値化しにくい部分がある職種です。そのため、従業員の行動や意欲などの細かな点に注目し、評価に反映する必要があります。
<記入例文>
事務職は営業職とは異なり、業績を数値で表現することが難しい職種です。そのため、業務効率や正確性の向上のような、細かな点を評価に反映することが重要になります。積極的に取り組んだ点があれば、評価の判断材料にしましょう。
<記入例文>
技術職や製造業は、プロジェクト管理、生産・品質管理、技術開発などの具体的成果を評価します。業務効率化やコストダウンなどにつながる貢献は、ある程度、数値化しやすいので具体的に記載しましょう。
<記入例文>
コンサルタント職は、業績を客観的に判断しやすい職種です。一方、数値化できる成果だけではなく、仕事への取り組み方を評価することや、本人が気づいていない改善点を進言することも重要になります。
<記入例文>
公務員は一般的に能力評価を年1回、業績評価を年2回行います。役職や職種によっても異なりますが、いずれも業務で発揮した能力と成果を評価しましょう。
<記入例文>
人事評価シートは、適切なマネジメントや人材育成に役立ちます。しかし、従来の紙媒体やエクセル(Excel)による人事評価シートの運用は、シートの社内共有や集計に手間がかかることが課題でした。
WorkVisionの『人事評価シートDX』なら、人事評価シートを効率的に運用できます。現行の人事評価制度やフローを変更しなくても、エクセルからでも簡単にシステムに移行できることが魅力です。30日間の無料トライアルも利用できるので、人事評価シートでお悩みの場合は、ぜひご相談ください。
■人事評価シートDXの特徴は以下のページでも詳しくご紹介しています。
人事評価シートDXが選ばれる理由
人事評価シートの運用により、従業員の成果や能力を適切に評価できるようになります。給与や昇進など自身の待遇に影響する人事評価が公平に行われることで、従業員は積極的に業務やスキル向上に臨むようになると期待できるでしょう。
評価者をはじめ人事・総務部門が、適切で効率的な人事評価制度を実施するためにも、今回解説したようなポイントを参考に、自社に合った人事評価シートの運用を目指してください。