2023.03.17
近年、さまざまな企業で「目標管理シート」の導入が進んでおり、看護業界でも看護師のマネジメントに活用できます。看護業界に目標管理シートを導入すると、看護師一人一人の業務を適正に評価しやすくなり、モチベーションの向上も見込めます。
この記事では、看護業界の人事・総務担当者、師長や管理職の方向けに、目標管理シートを導入するメリットや注意点、具体的な記入例などについて解説します。
目次
はじめに、看護師の業務を管理・評価するための「目標管理シート」について、その必要性を以下の3つのポイントに分けて解説します。
目標管理シートでは、看護師自身が業務目標を設定します。目標を設定するためには、業務への取り組み姿勢やスキルなどの現状を自己分析して、課題点を把握しないといけません。例えば、「患者の対応がスムーズにできない」「コミュニケーションがうまくとれない」などです。
また、業務目標の設定時は、師長や管理職などの評価者と相談して、達成可能な目標を設定します。お互いの認識を擦り合わせることで、必要な業務能力をどのくらい備えているかが分かるようになり、担当業務への理解がさらに深まるでしょう。
目標管理シートでは、客観的に評価しやすい具体的な目標を設定し、その達成度を振り返ります。評価基準と達成度が明確化されるので、人事評価にありがちな「評価者の主観によって評価にバラつきが生じる」「担当者によって評価基準や結果が変わる」という事態を防ぎやすくなります。
その結果、看護師のスキルや取り組みを公平に評価できる仕組みを構築でき、看護師それぞれの業務内容を正当に評価できるようになるでしょう。
看護業界は激務が続くため、モチベーションを維持しづらいこともあります。自身のスキルや取り組みが適切に評価されることで、業務遂行の原動力となり、看護師のモチベーションが向上します。
また、目標管理シートの目標は看護師自身が決めるため、達成したときのやりがいも大きくなります。主体的な業務への取り組みや成長への意欲の高まりが期待でき、中長期的な人材育成につながるでしょう。
看護師業務で目標管理シートを活用するメリットや効果について、以下のような観点で整理してみましょう。
先述した通り、目標管理シートでは、個々の現状や課題を把握して、適切な業務目標を設定します。つまり、評価結果は「成果を出すために課題を解決できたか」が明確になるということです。
目標管理シートの結果を見れば、組織目標を達成するために看護師が学ぶべきことやスキルが把握できます。これをもとに看護師の育成・研修計画を立てれば、一人一人の看護師はもちろん、組織全体のさらなる成長にもつながるでしょう。
目標管理シートの評価基準は、基本的には看護師が立てた業務目標の「達成度」となります。明確な評価基準があるため、客観的で公平な評価が行いやすくなります。
これは評価担当者にとっても大きなメリットです。あらかじめ決められた基準に沿って看護師を評価できるため、評価業務の省力化と効率化につながります。空いたリソースをほかの業務に配分できるため、生産性の向上にも役立つでしょう。
目標管理シートの導入により、「成長が評価に結びつく」職場環境や人事評価体制が作れます。そのため、看護師の仕事に対する意欲が高まり、主体的にスキル向上にチャレンジするようになります。管理者側が強く働きかけなくても、看護師が自主的に成長しようとするため、人材育成の効果も今まで以上に高まるでしょう。一人一人が着実に成長することで、組織全体の発展にもつながります。
看護業界では人手不足が深刻化し、看護師の離職率の改善が急務です。身体的・精神的に過酷な職業で、仕事への評価が適切に行われていなければ、モチベーションの低下から離職率はさらに高くなってしまうでしょう。
目標管理シートを導入することで、看護師が「自分の仕事が正当に評価されている」と感じる機会が増えるため、離職を防ぎやすくなります。目標管理シートの導入には、看護師の離職率低下の効果も期待できます。
目標管理シートの運用は、「課題の洗い出し」「目標の設定」「計画と行動」「評価とフィードバック」という流れで進みます。一連のプロセスを繰り返すことで、看護師それぞれの業務品質が向上していき、全体的な業務効率化が図れます。
結果的に、患者へより良い医療サービスを提供することができ、患者の満足度向上や医療機関の評判に好影響を及ぼす効果が見込めるでしょう。
看護師の目標管理シートを運用する際は、以下のようなポイントや注意点があります。
目標管理シートの運用で最も重要なことは「具体的な目標」を設定することです。目標の設定は看護師自身が行いますが、このとき、曖昧な目標を設定してしまうと、達成状況を客観的に判断しづらくなります。
看護業界では、数値だけで業績を判断できないケースも珍しくありません。そのため、「●月までに●●の医療機器の使い方を覚える」「●月までに●●の疾患についての知識と看護技術を習得する」といった目標設定をするといいでしょう。本人だけでは目標を具体化できないこともあるため、師長や管理職、先輩からのアドバイスも有効です。
目標管理シートで設定する目標の難易度は、対象期間内に達成可能な適切な範囲でないといけません。始めから目標達成の実現度が低いと、本人のモチベーションが後ろ向きになってしまうこともあるでしょう。例えば、難易度が高すぎれば途中で挫折しやすくなり、低すぎれば容易に達成できるので実力以上の評価になってしまう可能性があります。
いずれの場合も、適切な目標管理や人事評価に悪影響を及ぼすため、看護師一人一人の経験やスキルレベルに合った目標設定ができるよう、必ず師長や管理職、先輩が内容を確認して必要に応じて調整するのがポイントです。
看護師一人一人に設定する目標は、組織目標と関連性を持たせる必要があります。その理由は、目標管理シートの目的のひとつが、個人と組織の向かうべき方向性を合わせることだからです。
いくら個人が努力しても、それが組織の求めるものと一致していなければ、期待する業務改善や成長が見込めません。また、あまりにも現場の業務とかけ離れていて、実現不可能な組織目標を一人一人の看護師に求めるのも適切な目標管理とは言えません。
例えば、「安全な医療提供」という組織目標がある場合には、看護部門や診療科の業務に落とし込み、「●●のインシデント発生件数を●%にする」「病棟での転倒・転落発生事例を分析・対策を講じて●件を目指す」などが目標となるでしょう。一人一人の看護師には、この目標を達成するために行うべきことをさらに落とし込んで目標設定します。
このように、組織全体が効果的に成長していくためには、病院や施設が目指す目標と、それを実現するための個々人の目標が合致した状態で、日々の業務に臨む必要があります。
目標管理シートの基本的な評価基準は「目標の達成度」です。しかし、それだけでは個人の取り組みや努力を評価しにくいため、目標達成に向かう「プロセス」も評価に反映するケースが増えています。
そのため、目標管理シートには具体的な取り組みを明確に記載することも重要です。例えば、「点滴・与薬インシデント防止のため●●を●●して対策する」「患者とのコミュニケーションを増やし、看護計画に活かすために、ナースコールを1日●回以上とる」などです。
具体的なプロセスを記載することで、あとから振り返るときに「目標を達成するために何をしたか」「どこに課題があるか」を把握し、次に向けた改善に取り組みやすくなります。
目標管理シートの対象期限が訪れたら、評価者が目標の達成状況を評価します。このとき、被評価者への主観や個人的な感情が加わると、適切な評価はできません。評価結果に対する納得感を看護師から得るためにも、あらかじめ設定された目標や評価基準に沿って評価するのが重要です。
看護師を公正に評価するためには、普段から業務に対する姿勢や取り組みを観察しておくことが重要です。看護師の業績や成果は、具体的な数値で表せないものがほとんどです。そのため、患者や家族とのかかわり方や看護業務への取り組み姿勢など、情意評価を意識する必要があります。
<記入例文>
目標管理シートを運用することで、看護師一人一人の業務を適切に評価できるようになり、病院や施設全体の業務改善や、より良い医療サービスの提供にもつながります。しかし、目標管理シートを紙やエクセル(Excel)で運用すると、進捗管理や集計などの手間がかかる点が気になることでしょう。
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■人事評価シートDXの特徴は以下のページでも詳しくご紹介しています。
人事評価シートDXが選ばれる理由
目標管理シートの運用には、今回解説したようなさまざまなメリットがあります。病院や施設が目指すべき目標と、一人一人の看護師の業務目標ができるだけ同じ方向性を向くようにすることや、評価担当者が客観的な視点で評価をつけることが重要です。
また、看護師に目標管理シートを活用してもらうことで、それぞれの業務への取り組み姿勢や成果を正当に評価しやすくなります。看護師自身のスキルアップ・キャリア形成にも役立つうえ、モチベーションが向上すれば、離職率の低下や、良質な医療サービスの提供へとつながるでしょう。