2022.04.13
ヤフーやマイクロソフトなど、人事評価制度の一部に「相対評価」を採用している企業も少なくありません。
相対評価には「集団内での立ち位置がわかりやすい」「人件費を管理しやすい」というメリットがあります。
しかし、企業によっては、相対評価が組織風土や企業文化に合わない可能性もあるため、人事評価における相対評価のメリットとデメリットを知ることが大切です。
また、相対評価の実施には手間がかかるため、効率化のためのシステム導入が必要になります。
この記事では、人事評価における相対評価のメリットや、人事評価で相対評価を活用した事例、おすすめの人事評価システムについて解説します。
社会保険労務士:蓑田真吾(当記事執筆・監修)
目次
相対評価とは、ある部署やチームのなかで、社員の成果やスキルを周りと比べて相対的に評価する方法を指します。
代表的な相対評価の方法が「ランク評価」です。
ランク評価では、あらかじめA評価(10人)、B評価(20人)、C評価(30人)、D評価(10人)と評価の枠組みを決め、社員の成果やスキルに応じてランクを当てはめていきます。
それに対し、周りの社員の成果やスキルにかかわらず、目標やノルマの達成度をそのまま評価するのが絶対評価です。
相対評価と違い、優秀な社員が多い場合は、A評価(30人)、B評価(10人)、C評価(20人)、D評価(10人)と人事評価の分布が偏る可能性があります。
相対評価にはメリットだけでなく、デメリットもいくつかあります。
人事評価における相対評価のメリットやデメリットを知り、自社の組織風土に合った人事評価制度を採用することが大切です。
人事評価において、相対評価を導入するメリットは次の2点です。
相対評価を採用すれば、社員が部署やチームでどの程度のレベルにあるのかがわかります。
集団内での立ち位置が「見える化」されるため、競争原理が働き、社員の意欲やモチベーションを刺激することができます。
相対評価は人件費をコントロールしやすいのも特徴です。
絶対評価と違い、期間によって成績優秀者の人数が変動しないため、人件費予算に基づいた査定が可能になります。
また、組織として求める人材がぶれにくくなります。
相対評価の場合、集団の中で評価対象者を比較し順位付けなどを行います。結果的に上位者に一定の傾向が表れるケースも少なくありません。相対評価によって組織内で評価されるべき人材が明確になっていれば、人事評価の指標の一つとにもなり、業務自体もスムーズになるでしょう。
単純に「評価がしやすい」という点も相対評価のメリットです。
人事評価制度は継続的な運用によって従業員の成長につながります。結果のぶれが生じにくい相対評価であれば、評価者の業務負担も少なく済み、評価期間全体での評価を出しやすくなります。
一方、相対評価には2つのデメリットがあります。
相対評価では、所属する部署の業績やスキルレベルによって評価が変動するため、不公平感が生まれる可能性があります。
実際にパーソル総合研究所の「人事評価と目標管理に関する定量調査」では、63.0%の従業員が「部署によって目標の難易度が違う」と回答しています。
また、相対評価を実施する場合、次のような業務フローを採用するのが一般的です。
絶対評価よりも人事評価の工数が多いため、相対評価を導入するとマネジメント層の業務負担が増える可能性があります。
まずは、評価の基準や上位者の割合を従業員に共有することが大切です。
個々の努力は認めつつも、人事評価で重視する点をあらかじめ提示しておきましょう。また、相対評価と絶対評価を両方実施する際は、それぞれの評価項目も明確化すべきです。
評価前に明確な成果の基準を示しておけば、従業員間で生じる不公平感をある程度抑えることができます。加えて、人事担当者は人事評価の基準についてしっかり把握し、従業員への理解を求めましょう。
相対評価の場合、周囲のレベルによっては従業員自身の努力量と評価がともなわない可能性があります。
しかし、評価項目が明確な絶対評価は透明性が確保されており、従業員が周囲を気にせず努力しやすい点がメリットになります。
評価項目が可視化されることで、従業員自身に不足している点も明確になります。従業員が自ら課題を発見したり、努力すべき方向性を掴んだりしやすくなる場合があります。
絶対評価の場合、従業員のほとんどに高い評価が出る可能性もあります。賞与などの面で評価を反映しづらくなることもあるでしょう。
会社のバランスが崩れ、人事評価に見合った報酬やポジションを提供し続けられない場合、従業員の離職を招く恐れもあります。
絶対評価の場合、評価基準が評価者の考えに依存することも大きな課題です。
厳格な評価基準の結果、上位者が出なかったり、平均値ばかりがついたり、といった事態も考えられます。適切な人事評価が行われない場合、やはり従業員の離職を招きかねません。
人事評価制度の一部に相対評価を組み込んだ事例として、サイバーエージェントの「ミスマッチ制度」が挙げられます。
ミスマッチ制度とは、半年ごとに部署内の下位5%の社員をミスマッチ認定し、マネジメント層との面談を通じて改善点を話し合う制度です。
ミスマッチ認定が2回おこなわれると、部署異動などを提案し、人材の再配置を促す仕組みになっています。
会社の文化や価値観に合った社員を重視するサイバーエージェントならではのマイナス査定制度です。
しかるべき評価をした結果、期待していたと思われる評価に値しなかったという現実は伝えるべきです。単に慰めるだけでは従業員本人の成長につながらないだけでなく、「来年は今年の分まで評価してもらえる」と誤認識させてしまう恐れもあります。
離職者の続出など、組織力の低下につながるリスクを回避するためにも、従業員の不信感を招くような特例的な対応は望ましくありません。
部下に声をかける際は、本人の努力自体は認めつつ、チューニングのように方向性のずれを修正するアドバイスを心がけましょう。部下本人が再度前向きに業務に向き合えるよう、すべてを否定しないことが大切です。
人事制度における相対評価には、メリットだけでなくデメリットもあります。
人件費をコントロールしやすい一方で、所属する部署によって評価が変動し、不公平感が生まれやすい点に注意が必要です。
また、絶対評価よりも人事評価の工数が多く、マネジメント層の業務負担が増えるというデメリットもあります。
相対評価のメリットとデメリットを知り、自社に合った人事評価制度を導入することが大切です。
人事評価制度に相対評価を組み込むなら、人事評価シートDXの導入がおすすめです。
人事評価シートDXの強みの1つが、相対評価にかかる工数を最小限化できる点です。
人事評価シートDXを利用すれば、人事評価シートに入力した内容を集計し、相対評価シートに自動で転記できます。
絶対評価を集計し、相対評価に再度変換する手間がかからないため、ムダな事務作業をなくすことが可能です。
人事評価シートDXは5段階評価やランク評価にも対応しており、あらゆる人事評価制度で利用することができるのも特徴です。
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社会保険労務士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。法改正内容を踏まえながら、ヒアリング内容を基に、企業に合った様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業の人事労務業務をサポートしています。